槍・穂高連峰縦走登山 -3000m峰八座を踏破-
8月11日(土)〜14日(火)
実施報告

槍・穂高連峰の縦走路。8月13日、槍ヶ岳を背景に南岳の稜線を行く参加者
 2007MHC登山講習、槍・穂高連峰縦走登山は、8月11日(土)〜14日(火)に、槍ヶ岳登山参加者3名、槍・穂高連峰縦走登山をこころざす参加者26名、総勢29名で実施されました。登山は、天候にも恵まれ、当初の目的を全て達成し、事故や、怪我も無く、全員無事に、感激のうちに終了し、下山して参りました。
 ご支援いただいた関係者の方々はじめ、この縦走登山の為に準備し、気概を持って参加していただいた参加者の皆様に、深く感謝申し上げます。
大キレットの難所、長谷川ピークを通過する参加者  14日AM7:10、北ア最高峰奥穂高岳3190m登頂に喜ぶ。
8月11日AM6:30、参加者27名が、松本市安曇支所に集合し、マイクロバスに乗り込み出発、岐阜県側槍ヶ岳登山口のある新穂高へ向かう。天候は快晴。安房トンネルを抜け、温泉街を走り、新穂高ロープウェイ近くで下車。AM8:45準備を整え、重たい登山ザックを背負い、トラックが往来する林道を進む。林道沿いに流れる蒲田川支流は、昨年の豪雨の爪跡が残り、その修復と補強建設工事の重機音が騒がしい。
森林帯の登山道を進む   出合から望む滝谷 槍平小屋の主人沖田政昭氏から山談話を聞く
ひと汗掻いて穂高平避難小屋に着き、冷たい湧き水で喉を潤す。白出沢出合手前で、遅れてきた1名が追いつき、28名となる。白出沢出合から、一列縦列となり、森林帯の登山道を進む。PM12:00、滝谷出合に到着。見上げれば、北穂高岳、ドームへの大障壁がそそり立っている。対岸へ渡り、昼食とする。
出合から急坂を登り、南岳からの沢を横切り、PM2:00槍平小屋に到着、泊する。槍平小屋の主人沖田政昭さんより、多忙となる夕方までの暇時間を利用して、穂高岳滝谷を望みながら、最近の「槍平周辺の山事情」の話をしていただく。
  
展望が開け、笠ヶ岳が大きく迫る 森林限界から高山植物が咲き競う 岩礫のジグザグ道を登る
ヨツバシオガマ ハクサンフクロ チングルマ ミヤマダイコンソウ イワツメクサ
12日AM6:00槍平小屋を出発。天候は快晴。草花の豊富な森林帯を登り、ダケカンバの林を抜けると次第に低木帯となり、展望が開ける。振り返れば乗鞍岳、焼岳が遠く望まれ、登るにつれ、重量感のある笠ヶ岳が高く、大きく迫ってくる。森林限界からは、登山道脇に高山植物が咲き競い、道行く人の心を慰めてくれる。ヨツバシオガマ、ハクサンフウロ、チングルマ、ミヤマダイコンソウ、等多くの花々が咲いている。
高度が上がると裏銀座の山々が望まれ、岩礫のジグザグ道を登り続けると槍ヶ岳と大喰岳の鞍部、飛騨乗越に抜け出る。信州側の山々が姿を現し、展望が一段と開ける。稜線の斜面に設営されたテント場を通り、AM11:00槍ヶ岳山荘に到着。槍ヶ岳の100mの岩峰が、眼前にそそり立っている。山荘内で昼食を摂り、早速槍ヶ岳の山頂を目指す。
登頂を目指す登山者で大混雑の中、1時間かけてPM1:20全員槍ヶ岳3180mに登頂する。15分ほど留まり、全員で記念撮影をして、混雑の為早めに下山を開始する。この間に一日遅れで、サポート役のゲルラマ・シェルパさんも、今朝早く上高地を出発、槍ヶ岳に登頂して合流し、総勢29名となり、全員槍ヶ岳山荘に泊する。
稜線から望む槍ヶ岳の岩峰 槍ヶ岳3180mに見事登頂  クサリを頼りに岩場を下山
夕方、太陽が西の空を染めて静かに沈んでいく。夜、室内で遭難時のザイル操作を確認し合った後、玄関の外に出てみると、夜空に満天の星が輝いていた。南に赤く光る一等星アンタレスを控えるサソリ座、天空に白鳥座、こと座、わし座を見つける。流れ星が幾筋も瞬時に通り過ぎ、観察者はその度に歓声を上げる。北方にカシオペア、北斗七星を見つけると、それらを頼りに、鈍く光る北極星を探す
魅了して止まない小槍 太陽が西の空を染めて静かに沈む 茜色に染めていく夕陽に感慨もひとしおだ。
8月13日AM6:00槍ヶ岳山荘を出発する。天気は快晴、山々が朝陽に輝いている。槍・穂高縦走を目指す本隊26名は、槍沢を下る新参加者3名と別れ、岩稜線が続く縦走路へ向かう。後方に天を突く槍ヶ岳を望み、岩礫の登山路を登り詰めると、AM6:40広い頂上を持つ大喰岳3101mに登頂する。
広い頂上を持つ大喰岳 朝の槍ヶ岳を背景に稜線を進む 大喰岳3101mに登頂
大喰岳からは、信州側に残雪をいただく稜線を歩く。東方に常念岳、その彼方に噴煙上げる浅間山、八ヶ岳、富士山、南アルプス連峰を望む。岩場を攀じり、鉄ハシゴを登り詰めると、AM7:20中岳3084mに登頂する。
タカネヤハズハハコ
信州側に雪渓を残す中岳 チングルマ 中岳3084mに登頂
頂上から20分降りた中岳雪渓の水場で熱った体を冷やし、岩礫の登山路を進み振り返ると、円錐形状した槍ヶ岳の姿が美しい。氷河公園へ向かう横尾尾根との分岐を通過して、AM8:30南岳3033mに登頂する。眼下に屏風岩の大障壁が望まれ、前穂高岳北尾根が迫ってくる。
円錐形状した槍ヶ岳が美しい 横尾尾根分岐付近から望む南岳  南岳3033mに登頂
南岳小屋でトイレ休憩をして、AM9:00縦走路最大の難所、大キレットへ降下を開始する。降り始めの岩礫帯を過ぎると、急峻な岩場の降下が続く。岩場のわずかな凹凸にスタンスを確保しながら、手がかりを確実に捉え、慎重に下山する。最下部の長い鉄ハシゴを降り、最低鞍部付近で小休止する。降りてきた大絶壁を、振り返り見上げると、身震いする程だ。
縦走路最大の難所、大キレットへ降下を開始 最下部の長い鉄ハシゴを下降する 下降してきた大絶壁
最低鞍部から岩礫路を登り、いよいよ長谷川ピークから馬の背への登攀にとりかかる。取り付けられたクサリや金具も頼りに、切り立った岩稜線を進む。A沢のコルで小休止後、岩壁を攀じり、“飛騨泣き”と呼ばれる岩峰を乗り越え、しばらく登り続けて展望地の良い尾根上で昼食を摂る。上空には、北穂高小屋の一部が見え、頂上から流れ落ちる滝谷第一尾根の大岩壁が眼前にそそり立っている。
難所長谷川ピークを通過する
大キレット鞍部付近から見上げる北穂高岳  岩場に咲くイワギキョウ  長谷川ピークを眼下に岩壁を登攀
飛騨泣きの岩峰を登攀 岩峰上部をトラバースする参加者 北穂高岳山頂3106mに登頂
昼食後、急斜面の岩場をジグザグに登り詰め、北穂高小屋にようやく辿り着く。ここで水を補給して小屋脇に設けられた岩階段を登り、PM1:20北穂高岳3106mに全員登頂する。「バンザーイ、よくやった!」しかしこの頃から、稜線西側一帯に霧が湧きはじめる
北穂高岳からは急峻な岩尾根を進む。稜線西側の眼下には、「鳥も通わぬ滝谷」といわれる高度差1000mの大障壁がそそり立っている。しかし、今日は視界50m程の濃霧で何も見えない。最低鞍部からは、落石に注意して岩壁を攀じり、涸沢槍を経て涸沢岳への最後の難関に挑む。
北穂高岳からの急峻な岩尾根 最低鞍部から岩壁を攀じり
涸沢槍を経て涸沢岳へ
涸沢槍を目指し登攀を行う参加者
涸沢岳山頂3110mに見事登頂 北穂高岳からの縦走路を一望する   南に北ア最高峰奥穂高岳を望む
しばらくの登攀の後、岩溝のクサリを頼りに、満杯の力を使って体を迫り上げると、涸沢岳山頂へ続くなだらかな稜線に登り出る。PM4:20涸沢岳山頂3110mに全員登頂する。「おめでとう、頑張りましたね!。今日の難しい登攀は終わりました。」皆、緊張感が解れたのか、安堵の笑顔を交し合う。PM5:30登山者で混雑する穂高山荘に到着、泊する。一息ついた頃、夕闇迫る屋外では、参加者輪になって陣取り、祝杯の美酒に酔う。
14日AM6:00準備を整え、奥穂高山荘を出発。天気は今日も快晴。朝陽に輝く涸沢岳を背景に、50m程の岩壁を攀じるとなだらかな登りの岩礫帯のジグザグ路を行く。ジャンダルムの大岩峰を間近に望み、さらに稜線を進むと、AM7:10、北ア最高峰奥穂高岳3190mに全員登頂する。北方に、槍ヶ岳が天を突いて屹立し、前衛に北穂高、涸沢岳が聳え、私達が登って来た全ての峰々が望まれる。
朝陽に輝く笠ヶ岳の威容   岩礫帯のジグザグ路を行く  ジャンダルムの大岩峰を間近に望む
奥穂高岳山頂から望む、槍ヶ岳から穂高岳連峰への縦走路 奥穂高岳3190mに登頂「おめでとう!」
 一休みをして、吊尾根の岩稜線を前穂高岳へ向かう。眼下に箱庭のような上高地が展望され、蛇行する梓川沿いに赤い屋根の旅館が建ち並ぶ。AM9:30紀美子平に到着。軽荷で山頂に向かう。AM10:00前穂高岳山頂3090mに、難無く全員登頂する。「槍ヶ岳があんなに遠くに見えるよ」「よくのぼってきたなあ・・。」皆感慨もひとしおだ。東方は、雲海が広がり、遥かに富士山が眺望される。
眼下に箱庭のような上高地が展望される 東方は雲海が広がり遥かに富士山が眺望される 縦走にTV松本、
大野カメラマンも同行
吊尾根から望む前穂高岳  吊尾根クサリ場を下降する  前穂高岳3090mに見事登頂
 AM11:30紀美子平から下山開始。いきなりの岩稜の急斜面も、慎重に下降。途中昼食を摂り、腹ごしらえをして、PM1:45岳沢ヒュッテへ到着。ここで水を補給して、森林帯の緩やかな下山路を下る。PM3:00上高地の登山口へ到着。「おめでとう!」登山道から林道に出て、皆ほっと安堵の笑顔で握手を交わす。
上高地の登山口へ到着「おめでとう!」  高山植物が咲き競う岳沢  槍・穂高縦走成功、「やったぞ!バンザーイ」
 バスターミナル付近でクールダウンの体操をして、全員タクシーに乗り込み、PM3:30上高地を後にする。PM4:30安曇支所に到着。皆各人の車で帰還する事とし、ここで解散としました。
8月12日PM6:30、西の空に太陽が傾き、槍ヶ岳の岩峰を橙色に照らし始めた。

8月14日PM3:00、槍・穂高連峰縦走を終え、上高地へ下山。「やったぞ!、バンザーイ!」
 参加者の皆さん、おめでとうございます。当初の目的を全て達成した記念となる登攀でした。身震いするような感動をいつまでも残す、生涯忘れられない登山となった事でしょう。皆さん自身が成し遂げた大成果です。良いメンバーに恵まれました。参加者の皆さんに拍手を送ります。